金曜日に退院し、次の日(土曜)に飛行機で大学生活を送っている一人暮らしの家へと帰りました。昨日から引き続き食事もまともに摂れておらず、生きた屍のようでしたが、予約を取ってしまっていたので、気力を振り絞って空港へと向かいました。2つの不安を抱えて、、、。
飛行機に搭乗する際、不安な点が2点ありました。一つは手荷物検査時に金属探知機のゲートをくぐる際に、抗がん剤の投与用に胸に埋め込んだCVポートが金属として反応し、アラームが鳴るのではないかという不安です。万が一、鳴ってしまっても係員に説明をすればいいのですが、抗がん剤直後で体調があまり良くなかったので、鳴るか鳴らないか分からない状態でゲートをくぐるのは精神的に負担でした。
結論から述べると、CVポートではゲートのアラームは鳴りません。これ以後何度も飛行機に搭乗していますが、絶対に鳴らないので大丈夫です。
もう一つの不安な点。それは体調面です。飛行機は一度離陸してしまうと車や電車と違い、個人の自由の制限が大きい乗り物なので、何かあった場合にも目的地まで我慢を強いられることになります。目的地までの飛行時間は約1時間半。まあなんとか大丈夫かなと思っていました、、、、、。
離陸から30分、段々と気分が悪くなっていくのがわかりました。やばい、なんとかしなきゃ!っと思ってもベルトをしているため楽な姿勢をとることもできず、冷や汗をどんどんかき、段々と目の前が真っ白になっていきました。初めての経験でした。私も流石にこれは気を失うと思ったので、CAさんを呼びました。CAさんには、体調不良について思い当たる節があるかどうかなど聞かれましたが、当時の私は会話をするのも限界に近かったので、とにかく首だけ振って答えていました。最終的には氷枕をもらい、一番最後尾の席が運よく一列空いていたので、そこで寝かせてもらいました。一時は本当にどうなるかと思いましたが、体を横にすることができたおかげか、目的の空港に着陸する頃にはある程度まで回復し降機することができました。本当にCAさんには感謝しています。また、体調に不安のある状態で飛行機に搭乗したことについては非常に反省しています。よくも悪くもいい経験になりました。
私が言うのもあれですが、抗がん剤直後に飛行機に乗ることは控えましょう。
無事(?)一人暮らしの家に到着後、飛行機での一件もありすぐに就寝しました。次の日(日曜)から数日間は、相変わらず食欲がなく悪心もひどく、1食でウイダー1個程度の食事や、麻婆豆腐や塩ラーメンなど味が濃く、柔らかいものを少量食べる生活が続きました。治療前は運動部でご飯も1食に1.5合は食べていたので、いつも通りの量を食べれないことや、筋肉がどんどん落ちてしまう不安で精神的に参っていました。また、抗がん剤を始めてから便秘になり、1週間便がなかったこともありそのような面でも体が食べ物を受け付けなかったのかもしれません。食べたくても体が食べ物を受け付けない。こんなに辛いことはありませんでした。また、癌になると痩せるとよく言われますが、抗がん剤の副作用で食べたくても食べれないことも原因の一つなんだなと実感しました。余談ですが、癌の研究をしているので、自分が元気な頃は、癌患者の体重減少は体内の代謝変化の結果によってのみ起こるとばかり考えていました。こればっかりは検体から得られたデータをただ見続けてもわからない情報です。
体力面についても大きな変化がありました。歩くとすぐ息切れするようになりました。普段から体力にはとても自信があったので、相当ショックでした。5分も歩くと息切れして、肺が痛くなりました。息苦しいといった感じです。特に何もしなくても大きく息を吸うだけで胸に痛みがはしりました。骨肉腫の転移部位として有名なのが肺なので、肺に転移したのではないかと不安で不安で仕方ありませんでした。ここ数日、まともに食事も摂れていなかったので、エネルギーが足りていない可能性も考えられたため、ひとまずは家で安静にして、たくさん食事を摂って体力を戻すことにしました。それでも息切れがひどければ病院に行こうと思いました。
水曜日、やっとご飯と味噌汁が食べれました。お米が食べれたことに感動して、泣きました。体重は退院後からの5日間で7kg落ちました。毎食、ウイダーやおかず少量の生活ならそうなりますよね。明らかに筋肉が落ちました。特に足はかなり細くなりました。無理しても食べなきゃいけないと思いました。便は月曜に出ましたが、その後もしばらく便秘が続き(そもそもあまり食べてないからかもしれません)、次に出たのは金曜日でした。退院から1週間経つ日曜日には今まで食べていた量のご飯が食べれるようになりました。
退院からの1週間は、ご飯の時以外は常に横になって寝ていました。何かをやろうにも無気力。外に出て歩くと息切れ。来週の卒業式までに体力回復に努めた1週間でした。また、AP療法では抗がん剤投与後、1~2週間で免疫が一番低下することがわかっているので、コロナに罹らないためにも家で体力回復という選択をしました。加えて、患部の痛みについては薬を飲まなくても我慢できるくらい、いや、痛みを忘れてしまうくらいに治まっていました。抗がん剤は体にとって強烈な薬なんだなと改めて実感しました。
それではまた。ありがとうございました。
退院後半編はこちら。
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